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工房巡り
by 草島すなお
サクラの天板幅ハギ中(IKARI工房)
建前が終わると、2人のベテランの大工さんが私の家の担当となった。1人は陽気で、1人はどちらかといえば無口な如何にも職人さんらしい大工さんだ。毎朝、午前7時半には我が家に到着し、夕方6時を過ぎても作業が終わることはなかった。
家造りが進む一方で、家具や建具はそれぞれの工房で製作中であった。
2004年(平成16年)11月13日、娘を連れて氷見市にある2つの工房巡りをした。氷見市街から西へ向かって10分ほど走ると、ちょうど「山(やま)」と「街(まち)の中間地に常本建具店がある。
常本さんはこの道40年以上のベテラン建具職人で、奥さん、息子さん、息子さんのお嫁さんと家族で建具屋を営んでおられる。今では、地元の木を使う機会はそれほど多くないらしいが、口数の少ないこの職人さんには自己主張することはなく、ただ与えられた材料で受けた注文を誠実に実現してくれる、そんな安心感が漂っていた。
工房を覗かしてもらうと、クサアテの木が玄関引き戸の様々な部材に加工されてそこに並べられていた。これまで、丸太の樹皮とその木口しか目にしたことがなかったクサアテが、製材・加工の工程を経て初めて全貌を現したその木から発せられるアテ特有の何ともいえない香りが、鼻腔を抜けて心地よく脳を刺激する。手にとって、まじまじと見ると、「素直で加工しやすい」「狂わない」「適度に堅い」「耐久性が高い」といった特長を容易に感じさせてくれ、加えて「美しさ」も際立っていた。順調な仕上がり具合に満足しながら、常本建具店を後にした。
次に訪れたのは、女性家具職人五十里さんが営むIKARI工房だ。石川県との県境、氷見市坪池地区の山里にあるこの工房は、平成3年に廃校となった赤毛小学校の教室が作業場となっており、大きな木工機械が小さな空間を占領していた。
廃校時、一時は取り壊されそうになったこの校舎が地元の人達の熱い思いで残されることになった。ここには、家具工房の他にも2人の若い女性がガラス工芸や陶芸工房舎を主宰しており、コミュニティセンターとして生まれ変わったこの施設を盛り立てている。
五十里さんは、家具の本場、岐阜県高山の技術専門学校で木工を学び、家具工房で4年間働いた後、2000年2月からこの工房で家具づくりに励んでいる。家具だけでなく、かんざしやアクセサリー、おもちゃ、一輪挿しなど小物も多く、2階の展示室では、私の娘も目を輝かせてこれらの作品を手にしていた。
五十里さんにはダイニングテーブルを作ってもらうことになっていた。材料は、地元氷見産のヤマザクラだ。林業を営んでおられる地元の高峰さんが約十年前、この地で生育していた山桜の木を伐採することになったが、あまりに立派な木だったので、将来何かに活用することもあるだろうと、厚めの板に挽いて保管していたのだった。運良く買い求めることができた私は、これで五十里さんにダイニングテーブルを作ってもらうことにしたのだった。五十里さんと高峰さん、近くにいながら出会うことのなかった2人が、この近くで育っていた山桜の木を通して巡り会うことになったのだ。
作業場を覗くと、彼女は重たいヤマサクラの板を幅はぎしようと格闘している最中だった。ちょっと手伝ってみたが、その重さは予想以上のものだった。これを若い女性職人が・・・、そのたくましさに感服した。
2軒の工房を訪ねて、地元の素材を活かしてくれるこうした職人さんの大切さを改めて
感じた。12月下旬に完成品となって再会できる日を一層楽しみにさせてくれる工房めぐ
りであった。
建具のクサアテ(常本建具店) 仕口加工 仕口加工 IKARI工房のある旧赤毛小学校 工房のテーブル(IKARI工房)
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