[実例].顔が見える家づくり── “お金では買えない家づくり”に感動
by 草島すなお
子どもの成長とともに、両親と一緒に暮らす自宅がだんだん手狭になってきた。そこで、庭に私の一家が暮らすスペースを隣接して増築し、同時にすでに築40年も経つ親の家も一部改築することにした。
この具体的な構想に着手したのが2002年。建坪は30坪なので、実質新築したようなものだが、わが家が完成したのは、それから2年後の2004年12月のことだった。
実は、私は公務員で森林の整備や地元のスギ材の普及を担当していた時期に、一人の林業家と出会った。当時すでに85歳を超えていたその人は、高齢にもかかわらず、軽々と木に登って枝打ちを行い、間伐や山の手入れを怠らなかった。
その生き様に触れるうちに、私はいつの間にか、この人の山の木で家を建てたいと思うようになった。
富山には、このような林業家が何人かいる。スギ材の市況が低迷し、林業では食っていけないほど採算が悪化しても、一人山に入って、黙々と作業に精を出す。彼らは、寡黙だが、実は山や樹と対話しながら自然の奥深い営みを体得し、自らの人生を充実させて歩んでいる。
林業家だけではない。私が自分の家をつくってみて知ったのは、木と対話しながら自然を学び、その命を自らの技を黙々と刻み込み、世の中に2つとないものに仕上げていく、職人さんたちの存在だった。
彼らの仕事ぶりを見ながら、あるいは一緒に手伝いながら、私はかけがえのない家づくりがあることを、家族とともに実感することができた。
その思いは、この家で暮らした3年の歳月で、ますます強くなっている。
地元のとやまの木で、顔の見える関係で、家をつくることが、こんなに感動的なことだとは思わなかった。まさに“お金では買えない家づくり”だった。
そしてそれは、一人の林業家との出逢いからはじまった。

第2話へ続く |